このお話は、虚実取り混ぜて書いております。実在の人物、機関とは一切関係ないものとご理解ください。
「今週から出勤している、と。」
前々日に撮影したレントゲンを見ながら、医師がいつものように診察を始めました。
「はい。だから通勤に便利な所に転院したいんです。こちらに通うには、年休を取らなければならないのですが、ずっと休んでしまいましたから、ほとんど残っていないのです。」
通院の難しさだけを転院の理由にするつもりでした。
だって、万一、いつかまた救急車で担ぎ込まれるようなことになった場合、イヤな顔されたら困りますから、お互い禍根を残さず、本件を終わらせたいのです。
でも医師は、そんな私の淡い希望にはお構いなしでした。
「いいリハビリの先生についたからって、一週間で治るわけじゃないよ。」
先生、それ言っちゃいますか!?
どうやらさすがに今回ばかりは申し送りがあったのでしょう。
医師は私に、手を動かしてみるよう指示しました。
左右の手の甲と甲を合わせて見せると、もう動くじゃない、と感心したように言います。
・・・いいえ、左右の手首の角度、シワのより具合が全然違います。
もしかしたら、日常生活に大きな支障がなくなれば、リハビリは成功、とみなされるのでしょうか。
でもそれは、私の目指すゴールではありません。
この後のやりとりは省略しますが、私はなんとか転院理由を年休事情で押し通し、紹介状を手に病院を後にしたのでした。
教訓
次のプロジェクトでまた一緒になるかもしれないから、どんな場合も絶対にケンカ別れはしない、という考え方は、必ずしも一般的ではありません。