HMSバランス(思い出の樹の下で)

4月になりました。
この時期のHMSバランスコースといえば、そう、一本橋の側の、満開の桜です。
心弾む中にも、一抹の寂しさを感じるのは、この桜にまつわる思い出が多すぎるからでしょうか。
ずーっと頑張って練習してきた(つもりの)一本橋。
初めてHMSに参加した頃からお世話になった、今はもういないインストラクターさんに、たくさんの教えと励ましを受けました。
なのに未だに一本橋の女王?じゃないのは申し訳ない限りです。

今日の担当インストラクターはYさん。
なぜかマリで桶川に来る度に出くわす、気さくな方です。

練習は直線を半クラッチで進むところから始まりました。
低速、特に一本橋を想定した場合、つながるかつながらないかのボーダー操作がキモになるわけですが、さて、今までどんなこと教わってきたっけ?
そうだ、レバーは外側より根元に近い方が繊細な操作ができるのでした。

次の練習は、半クラッチに加えてリアブレーキ。
Yさんは、内側のくるぶしやその上の部分を車体にフィットさせると、足の指先で細やかに操作しやすい、と解説してくれます。
あ、これって、以前、インストラクターのKさんが教えてくれた「くるぶしグリップ」だ!
ステップ上の足を置く位置も色々試してみて、と言われて、少し後ろにしてみました。
私は足も小さいので、つい踵をステップに置いてしまうのですが、思い切って土踏まずを置いてみると、意外にもブレーキペダルが足の指先で優しく扱えます。
おお、これだ!

そして上体の動き。
バイクはハンドルを切ると反対側、例えば左にハンドルを切ると車体が右に傾こうとするので、人間は無意識にハンドルを切った側に上体を動かしてバランスを取るわけですが、この時、頭を振ると逆にバランスを崩しかねません。
脚の付け根で動くようにすると、思った通り?にバランスが取れる、と。
これはなかなか難しいのですが、頑張ることにしました。

そんな感じで午前は終了。
が、このゆるーい確認が、午後のドラマチック?な展開へとつながるのでした。

午後はいよいよ各種課題の練習です。
スネーク一本橋やかまぼこ一本橋、波状路、V字溝やW字溝などの往路の常設課題と、Uターンを主とした低速スラまたは千鳥とS字中心の復路、Yさんは一つずつ丁寧に説明してくれました。

私が苦手なのはスネーク一本橋です。
昼休み中に見直しておいた過去のメモには、
「カドを曲がった後、続く直線部も真ん中ぐらいまでは引き続き橋の外側を通る」
とありました。
そうだ、こう走らないと、内輪差で後輪が橋からはみ出した後、落ちるキケンがあるのです。

「レバーは根元、ブレーキは指先、足の付け根」だの「角を過ぎても半分は外側」だの、おまじないみたいに呟きながら何度も練習していると、不思議なことに、全部できるようになってきました。
上手くいくと、他もがんばれるもので、低速UターンS字も、ギリギリながらすべてクリア。
最後は、全課題をこなしてコンプリートできてしまったのでした。
その時、時刻は16:01。
「今、全部続けてコンプリートできたので今日はもうここまでにします。」
宣言すると、Yさんと、見ていた他の参加者さんが、やったあ!と言ってくれました。

こんなに達成感が得られたのは久しぶりです。
それからふと、風に舞う桜の花びらを浴びながら、気づきました。
これは今日1日の達成感じゃない。
今までずっと続けてきたから感じる達成感なんだ。
私の中に、今日Yさんが説明してくれたことを理解できる下地があったから、できたことなんだ。

今はもういない、左利きのKさん。
いつか奇跡のようにこの樹の下で逢える気はしませんが、桜満開の晴れた日に、あるいはとんでもない酷暑日に、いつも親身に指導してもらったことを、私は忘れないでしょう。

元気でいて下さい。

一本橋の桜