エマージェンシーオレンジの気持ち

その講習会は、春の嵐が忍び寄る、快曇の空の下で始まりました。
毎年恒例・春の交通安全週間の真っ只中で、白バイ隊員は不在、つまり準備や撤収作業はもちろん、デモ走行やコース案内も、いわゆる指導員、オレンジ色の制服を着たメンバーだけでやらねばなりません。

嵐の前兆の、いや~な風が吹く中、朝のミーティング。
「今日はつるばらさん、バランス課題のデモ全部やってください。それと慣熟走行の先導ね。」
こともなげに指名するチーフ。
え!?
ワタシの今年の目標、その二つができるようになること、なんですけど?
いきなり実現、というより目標に到達しなければならないってこと?
スリルとサスペンス、ではなく、緊張と不安が冷や汗となって全身から浸み出しそうでした。
とはいえ、やらねばなりません。
説明役の方と入念な打ち合わせをしていると、今日は乗車姿勢のモデルをお願いします、と別の声がかかりました。
・・・本日、人手不足極まれり?

ミーティング後、デモの練習を兼ねて順路の確認をするため、自分のバイクに駆け寄ろうとしたら、すれ違った先輩指導員が、ファイト!と笑顔でポーズを見せてくれました。
そう、ファイト!です。

順路に沿って課題を何度もさらっていると、コースの調整やその他の準備に余念のない仲間たちの姿が目に入ります。
大丈夫、みんながいる!
何があっても、絶対助けてくれる。
そう思ったら、勇気がわいてくる気がしました。
今年の目標をいち早く達成するチャンスに恵まれた!とさえ思えてきました。

そして本番は、周りのみんなにしっかり支えられ、割と落ち着いてこなすことができたのでした。
あくまで割と、ですが(苦笑)。
出来具合の評価はいろいろあるかと思いますが、私にとっては、ちょっとだけ前に進むことのできた、素敵な1日になりました。

後日、夫にこの話をしているうちに、ふと疑問が湧いてきました。
なぜ本職では、こんなふうに周りを信頼することができないのでしょう?
ミスしたら、どれだけ罵倒されるか、揚げ足取られるか、そんな考えばかりが浮かんでしまうのでしょう?

「緊張感が違うからや。仕事はミスしたら命取り。責任とらされる。だからやろ?」
ひと通り話を聞いてくれた夫が、こともなげに言います。
いや、事故も怪我もありうる講習会だから、指導員はめちゃくちゃ緊張してるんだけど。
「カネに直結してないから、かもしれんな。」
では、私にとって働きやすい、というか、私が働きたい場って、無給がベストってこと?
そんな極端な話ではなくて、信頼とか安心とかを感じられる職場であって欲しいだけなのですが。

HMSバランス(花散る春)

突然ですが、沈降したっきり浮上できないまま、半月ほどを過ごしています。
HMSも、度重なる公私の突発事件?でキャンセルばかり続いていました。
ここにきてようやくキャンセル待ちでつかんだバランスコース、嫌なことは何もかも忘れるくらい没頭したい・・・
そんな思いで参加しました。
毎年この時期は桜吹雪が楽しめるバランスコースですが、今年は既に散った後、影も形もないのがちょっと残念です。

そんな気持ちで走ってみたら・・・没頭って、できるものですね。

いつも途中で落ちてしまいがちなスネーク一本橋では、前輪はなるべく角っこの外側を通すこと、その時次のカドを見ること、に徹して何となく通過率アップ。

好きで割と得意な千鳥では、ハンドルフルロックのガツンがたまらない快感。

低速オフセットでは、砧を懐かしみつつ、パイロンの真横に来るたびにハンドルを切って静止ポーズ。

Uターンは自分のしっぽ(実在しませんが)を振り返りながら軽やかに。
続く厳しめの切り返しも、最初はできませんでしたが、見る見るうちに楽勝ラインを通せるように。

ノーマル一本橋は、肩が上がらないよう、くるぶしが車体にくっつくよう、タンクを締め付けて未だかつてない集中
・・・でしたがこればっかりはタイムに向上見られず(泣)
まあ、それも良しとしよう。

低速の練習に「嫌なこと」を消す効果は無いかもしれませんが、「嫌なこと」ばかりクヨクヨ考えない時間は確実に作ることができました。

花散る春は惜しまずに
実りの秋こそ信じよう

そう歌ったのは水木一郎さんだったでしょうか。
若葉の萌え出た桜の木を見ながら、ふっと思い出しました。
浮上できない私にも、いつか実りの秋は来るのかな?