万葉の旅人

(前回からの続きです)
ダメだと思ったら、引き返す!
無理はしない!
心につぶやきながら進みます。
途中、リーシュを付けた白い犬ならぬ白いヤギを連れた人を目にしたり、辺りの光景が微妙に浮世離れしていく気がしました。
そして道は、どんどん細く、曲がりくねっていきます。

やがて前方に、私の苦手なものが現れました。
私の苦手なもの、それはGでもラッキョでもありません。
長くて真っ直ぐなトンネル!
走っているうちに、意識が飛ぶか目が回るかバナナの皮でも踏むか、とにかく不吉なことが起こりそうで、とても苦手です。
が、引き返しようがないので、気を静めて、粛々とバイクを進めました。
いつもアクアラインのトンネルを通る時に歌う「鉄腕アトム」を、口ずさむというより、おまじないのように唱えながら。

耳をすませ 目を見張れ そうだアトム油断をするな

科学の威力か十万馬力か、なんとかトンネル通過!
しかし、バイクを止められる路肩があれば、Google マップをチェックしようと思いながら走る道は、既に立派な山間部でした。

止める場所、止める場所、とつぶやき続け、のたのた走り続けた挙句、ようやく、道の駅の表示に出くわしました。
「道の駅 万葉」
・・・いつのまに私は、平城山に迷いこんでいたのでしょうか?

辿り着いてみると、「まんよう」ではなく、「まんば」。
群馬県ですが、レインボー埼玉からの、キャンセル待ち取れました電話の通話がぶちぶち途切れる程の場所です。
駐車場にバイクスペースがあるのがありがたく、ご当地土産のイングリッシュマフィンをゆっくり味わって休憩しました。
・・・長瀞で、買い食いばかりしてまともな昼食を摂っていなかったので、私は腹ペコでした。
ああ、イングリッシュマフィンにまぶされたコーンミールの香ばしさよ!

道の駅には、当然、地図が置いてありましたので、そのあとの道行きはスムーズでした、と言いたいところですが、最後に一つ、オマケがありました。
やっと行き着いた「道の駅 ららん藤岡」からしばらく関越に入れなかったのです。
表示は「関越・上越方面」しかなくて、私の行くべき「関越・東京」がどこにあるのかわからない!

もうみなさんには、おわかりと思いますので、この後は書かなくてもいいかもしれません。
関越自動車道藤岡インターは、上りも下りも入り口は同じだったのでした。
やはり私の磨くべきは、一人旅のスキルなのだと、心底痛感した幕切れでした。

それにしても、小鹿野って、どの辺りまでだったのでしょうか?
バイクの聖地は、ビミョーに謎に包まれたままです。

小鹿野ガンダーラ

(前回からの続きです)
私は軽い気持ちで、長瀞から小鹿野目指して出発しました。
時計は13:00、少し立ち寄るだけなら、十分間に合う時間でしょう。
簡単にスマホの地図を確認し、標識を頼りにバイクの里を目指しました。

バイクの里なんだから、たくさんバイクが行き交うあたりがたぶん目的地。
・・・と思ったのですが、あまり通りません。
小鹿野を示す標識は、現れては消え、また現れてを繰り返します。
でも、たどり着かないのです。
誰もが行きたがるが、あまりに遠い・・・その国の名はガンダーラ、じゃなくて小鹿野です。
いえ、私にとっては、どこかにあるユートピア、どうしたら行けるのだろう、教えて欲しい・・・
と孫悟空(=サル)の気分で、ゴダイゴの名曲を口ずさみながら、ひたすら走りました。

そうこうするうちに、ようやく電柱の地名が、小鹿野になりました。
ふと前方に目をやると、なにやら表示板が見えます。
左右1.5の目を凝らすと、何ということでしょう。
「バイクの森 休館中」
平日だから?というわけでもないような。
でも、ここはバイクの里。
他にも色々あるはずです。
行ける所まで走ってみよう、そう思って、前を向きました。

一本の道をひたすら走っていくと、横断歩道に歩行者がたたずんでいます。
バイクを止めると、その人は軽く会釈をして、横断歩道を渡って行きました。
あ、もしかしたら、こんなやりとりこそが、この地をバイクの里たらしめているのかもしれません。
ハコモノとか、そういうのじゃなく、通りすがりのライダーに会釈してくれる、という受容性。
ああ、行ける所まで走ろう!

でも、日本の国土は、そんなに甘くはなかったのでした。
あと一回続きます。

旅人始めました

二輪車安全運転全国大会が今年からありません。
廃止されたのです。
というわけで、私の、選手のためのコーチという役割もとりあえずなくなりました。

これからどうしよう?
指導員は続けていきたいと思っています。
では、そのために、私に足りないものを身につけなければ。
私に決定的に足りないもの、それは
旅の経験!

自分が技術的に未熟だと思うあまり、講習会やHMSでの練習に血道をあげすぎて、私には一人でのロングツーリング経験がほとんどありません。
バイクで一人旅をすると、どんなことが起きるのか?
行きて帰りし物語を完結させるために必要な知恵、スキルは何なのか?
これを知らずして指導員活動をしていては、行き着く先は曲芸師!?(いや、そんな卓越したワザは無いけど)

まずは話に聞く、ライダーのユートピア「小鹿野」に行ってみようと思いました。
何があるからバイクの里なのかすら知らないのですが、それは行けばわかるでしょう。

連休中とはいえ、暦の上では平日のその日、朝4時に起きた私は・・・家中引っ掻き回して、ETCカードを探していました。
ようやくリュックの底からカードを救出し、バイクを発進させた時、時計は既に8:00。
しょうがない、行くのは長瀞までにして、かき氷食べて帰って来よう。

普段使っている道ではなく、Googleがイチオシするルートを使ったせいで、関越に乗るまでに軽い葛藤と焦燥はありましたが、長瀞には思ったよりも早く着きました。
駐車場の気のいい、あるいは商売上手な管理人さんにヘルメットを預かってもらい(バイクなのにクルマ1台分300円/日を払った)、かき氷を食べたり、寳登山神社をお参りしたりしました。
さんざん歩いて、買い食いして、でもまだ時間は13:00前でした。

これは小鹿野、行けるのでは?

魔が差した、とはこのことでした。

長くなりそうなので、続きは後ほど・・・。